日本国内でもネットミームとして広く知られた趙立堅(Zhao Lijian)氏。「アメリカ軍が武漢に新型コロナウイルスを持ち込んだ可能性がある」とする陰謀論を公然とSNSで発信したり、オーストラリア軍を風刺した加工画像を投稿したりと、そのアグレッシブな言動は常に国際的な摩擦の火種となっていました。
しかし、2023年1月、趙氏は突如として報道官の座を追われ、「辺界・海洋事務司」の副司長へ異動となります。この部署は、陸上国境や領海の境界画定、条約交渉などを担う極めて専門的かつ地味な実務部門です。世界中のカメラが集まる華やかな会見場から、表舞台に出ることのない裏方への配置転換は、国内外のメディアから「明らかな左遷人事」と報じられました。
この電撃異動の背景には、複数の複合的要因が存在したと外交関係者は分析しています。
- 対外イメージの修正要求:ゼロコロナ政策の破綻と経済停滞に直面した中国指導部が、欧米との決定的な対立を回避するため、過激すぎる戦狼外交のトーンダウンを図ったこと。
- 妻・湯天如氏のSNS炎上騒動:趙立堅氏の妻である湯天如氏が、中国国内で厳しい都市封鎖が敷かれていた最中にドイツ旅行を満喫する写真をSNSに投稿したり、「夫のために戦う」といった情緒的な投稿を繰り返して国内ネットユーザーの激しい怒りを買ったこと。
- 外交部内部での軋轢:伝統的な職業外交官たちから、スタンドプレーが目立ち国際的孤立を深める趙氏の手法に対して強い不満が噴出していたこと。
現在、趙立堅氏がメディアの前でマイクを握ることは一切ありません。国境付近の視察や境界標の塗り替え作業といった地道な公務に従事する姿が稀にネット上で目撃される程度であり、戦狼外交の象徴と呼ばれた男は、静かに時代の波に飲み込まれていきました。