照井順政氏の音楽的バックボーンを語る上で欠かせないのが、彼が主宰・所属してきたバンドやプロデュースワークの歴史です。同氏のキャリアは、一般的な劇伴作家が歩むクラシック直系や打ち込み専業のルートとは大きく異なり、ライブハウスシーン発のポストロック・マスロックバンドに端を発しています。
まず挙げられるのが、2004年に結成されたオルタナティヴ・ロックバンド「ハイスイノナサ」です。実兄である照井淳政氏(ベース・パーカッション)らとともに結成された同バンドでは、ギター・コーラス・作詞・作曲を担当。ミニマルミュージックやエレクトロニカ、複雑なポリリズムを人力でアンサンブルへと落とし込むスタイルは、残響レコードをはじめとするインディーズシーンで熱烈な支持を集めました。
続いて2016年、同氏はボーカリストのAnnabel氏、元school food punishmentのキーボーディスト・蓮尾理之氏らとともに新バンド「siraph(シラフ)」を始動させます。ハイスイノナサで培った複雑怪奇なリズム構築を基盤にしつつ、女性ボーカルの凛とした旋律を前面に押し出した楽曲群は、文学的で洗練されたポップミュージックの極致として高評価を獲得しました。
そして、音楽業界を決定的に震撼させたのが、4人組アイドルグループ「sora tob sakana(通称:オサカナ)」の全楽曲音楽プロデュースです(2014年〜2020年)。「未完成の少女たちの歌声」×「超高難度のマスロックサウンド」という前代未聞のマリアージュを仕掛け、「夏の現在地」「夜間飛行」「鋭角な日常」といった名曲を連発。アイドルファンのみならず、耳の肥えたロックファンや批評家筋からも絶賛を浴び、2020年の解散ライブ(日本武道館)に至るまで伝説的な足跡を残しました。