「令月」という言葉を辞書で引くと、大きく分けて2つの定義が示されています。1つ目は「何事をするにも良い月、めでたい月(吉月・善月)」という一般的な美称。2つ目は「陰暦2月(如月)の異名」です。「令」という漢字には「言いつける・法令」のほかに「良い・立派な・めでたい」という意味があり、「令息」「令嬢」「巧言令色」などの熟語にもその語義が生きています。
この言葉が日本人の記憶に強く刻まれる契機となったのが、2019年4月に発表された元号「令和」の選定でした。国書(日本の古典)である『万葉集』巻五「梅花の歌三十二首」の序文から引用されたことが、当時の宮内庁関係者や国文学界の発表で大きな話題を呼びました。
その序文を執筆したのは、奈良時代の歌人であり大宰帥(大宰府の長官)を務めていた大伴旅人(おおとものたびと)です。神亀7年(730年)正月13日、大宰府の旅人邸に集まった貴族たちが梅の花を愛でながら宴を開いた際、旅人が記した漢文の序文にその一節が存在します。