「モルモン教とエホバの証人は何が違うのか」という疑問に対し、最も根底にある回答は「神の捉え方(神観)」と「世界をどう見ているか」の根本的な断絶にあります。両者とも19世紀のアメリカ合衆国で誕生した新宗教ですが、その目指した方向性は正反対と言っても過言ではありません。
1830年にジョセフ・スミス・ジュニアによって創始された末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)は、アメリカ大陸にかつて存在した古代預言者の記録とされるモルモン書を独自の経典として聖書と並列に扱います。最大の特徴は、伝統的なキリスト教が説く「三位一体(父と子と聖霊は同一の実体)」を明確に否定し、父なる神、イエス・キリスト、聖霊は別々の存在であり、神は人間と同じく肉体を持っていると説く点です。人間も現世での徳と信仰を積むことで神の境地に近づけるという「昇格(神栄)」の思想を持ち、現世での学問、キャリア形成、家族の永続を極めて前向きに捉えます。
対照的に、1870年代にチャールズ・テイズ・ラッセルらによって設立されたエホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)は、急進的な終末論を主軸に据えています。唯一絶対の神「エホバ」のみを信奉し、イエス・キリストは神の最初の創造物(大天使ミカエルと同一視)であって神自身ではないと主張します。こちらも三位一体を「異教由来の教え」として徹底的に否定しますが、モルモン書のような外部経典は一切認めず、教団が独自に校訂・翻訳した新世界訳聖書のみを絶対の真理としています。
カトリックやプロテスタント、正教会などの伝統的キリスト教主流派から、双方が「キリスト教の異端」と見なされる最大の理由は、まさにこの三位一体論の否認と経典の改変・追加にあります。正統派教会の関係者は「キリストを告白していても、ニカイア信条をはじめとする歴史的教義を共有できない以上、エキュメニカル(教会一致)の対話対象にはなり得ない」と口を揃えます。ただし、異端と判定される神学的理由は共通していても、社会の中で生きる信徒のスタンスは全く異なっています。