Q1:ダリの『記憶の固執』の実物は日本国内で見られますか?
A1:残念ながら、原画そのものは米ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久所蔵コレクションであるため、日本国内で常設展示されている場所はありません。ただし、福島県の「諸橋近代美術館」(アジア最大のダリ・コレクションを誇る美術館)には、ダリが後年に制作した『記憶の固執』をモチーフとする大型ブロンズ彫刻『時のプロフィール』などが所蔵されており、立体化された「溶ける時計」の世界観を日本国内で体感することが可能です。
Q2:溶けた時計が指している時刻(時針)に意味はあるのですか?
A2:垂れ下がった時計の針を見ると、左の台座の時計はおよそ「6時55分〜7時」、中央の怪物の上に載る時計は「7時」、枝にかかる時計は「6時45分頃」と、すべて夕暮れから夜にかけての曖昧な時間を指しています。これはダリがカマンベールチーズの幻覚を見た夕食直後の薄暗い時間帯(黄昏時)を反映していると同時に、昼(覚醒・意識)から夜(睡眠・無意識の夢の世界)へと移行する境界線を象徴していると分析されています。
Q3:なぜ『柔らかい時計』ではなく『記憶の固執』という難解な題名なのですか?
A3:通称として「柔らかい時計(Soft Watches)」と呼ばれることも多いですが、ダリ自身が命名した正式タイトルはカタルーニャ語・フランス語で『記憶の固執(La persistència de la memòria)』です。ダリは単なる「物体の奇妙な変形」を描きたかったのではなく、物質的な時計が溶けて朽ち果てても、人間の精神や記憶だけは時間を超越して執拗に残り続けるという、人間の意識の不可思議さをテーマにしたため、この哲学的な名が与えられました。