国内の多くの病棟で圧倒的な導入シェアを誇るのが、日本光電製の生体情報モニターです。高い信頼性を誇る一方で、機器の特性やパラメーター設定を正しく理解していなければ、誤作動や擬陽性アラームの泥沼に足を取られることになります。
病棟業務で必須となる日本光電生体情報モニター操作方法の基本は、アラーム一時停止キーの適切な運用と、誘導切り替え操作です。アラームが鳴った際、単に「消音」を押して画面から目を逸らすのではなく、一時停止(多くは1分または2分)のカウントダウン中に、原因が電極脱落なのか不整脈なのかを画面上の誘導切り替え(第II誘導から第I誘導、NASA誘導などへ)によって確認します。第II誘導で基線が揺れてQRS波が小さく判読しづらい場合でも、誘導を切り替えるだけで明瞭な波形が再描出されるケースは日常茶飯事です。
アラーム誤作動の7割以上を占める原因が、心電図電極誘導の正しい貼り方の不徹底です。3極誘導(赤・黄・緑)において、基本となる貼付位置は「赤=右鎖骨下」「黄=左鎖骨下」「緑=左側腹部(または左下肋間)」ですが、現場では骨の突起部や鎖骨の直上にそのまま貼り付けてしまい、皮膚と電極の間に隙間が生じて基線が揺れるトラブルが後を絶ちません。
電極を装着する際は、皮膚の皮脂や角質、汗をアルコール綿または専用の皮膚前処理剤でしっかりと拭き取り、乾燥させてから貼付します。特に肋骨のくぼみや平坦な筋肉部を選び、電極の中央にあるゲル部分を強く押し付けすぎず、周囲のテープを皮膚に密着させることがノイズ混入を防ぐ最大の防壁です。また、コードの重みで電極が引っ張られないよう、リード線を軽くテープでループ状に固定(ストレスループ)させる配慮が、夜間の不要なナースコール激減に直結します。
さらに見落とされがちなのが、呼吸数インピーダンス測定の仕組みに伴う誤検知です。モニターの呼吸数測定は、心電図の「赤」と「緑」の電極間に極めて微弱な高周波電流を流し、息を吸って胸郭が膨らんだ時の電気抵抗(インピーダンス)の上昇と、息を吐いて縮んだ時の抵抗低下をカウントしています。
この仕組みゆえに、患者の胸郭の動きが浅く腹式呼吸が主体である場合、胸部の抵抗変化が小さすぎて「呼吸停止(アプニア)」のアラームが誤作動します。逆に、心臓の拍動による血液の出入りを胸郭の動きと誤認し、実際には無呼吸であるにもかかわらず心拍数と同じ「70回/分」の呼吸数がカウントされ続ける「心拍同期(カーディアックインピーダンス)」という極めて危険な現象が起こり得ます。「モニター上の呼吸数は正常なのに、患者の胸郭が全く動いていない」という致命的な見落としを防ぐためにも、呼吸測定に関しては必ず医療者自身の目による胸腹部の上下動の視診が必須条件となります。