内服薬を体に入れること自体に心理的な抵抗感がある母親にとって、最大の武器となるのが「局所投与薬」です。鼻粘膜や眼球の表面に直接作用させる点鼻薬や目薬は、血流に乗って全身を循環する量が極めて微量であり、母乳への移行リスクは実質的にゼロとみなせます。
鼻づまりがひどい場合、血管収縮剤を含む一時しのぎのスプレーではなく、医療用と同じ成分が配合された「季節性アレルギー専用ステロイド点鼻薬」(フルナーゼ点鼻薬やナゾネックス等)が推奨されます。「ステロイド」という名称に身構える母親もいますが、局所で炎症を沈静化させたのち肝臓で速やかに代謝分解されるため、全身性の副作用や母乳汚染の心配はありません。目のかゆみに対しても、抗ヒスタミン成分を含有する目薬を躊躇なく点眼して差し支えありません。点眼後、目頭の涙嚢(るいのう)を約1分間軽く指で押さえることで、鼻涙管を経由した全身吸収をさらに防ぐことができます。
ここで専門家が警鐘を鳴らすのが、漢方薬に対する過信です。ネットコミュニティ等では「西洋薬は怖いけれど、漢方の小青竜湯(しょうせいりゅうとう)なら安心」という言説が散見されますが、これは医学的に危険な誤認です。小青竜湯には「麻黄(マオウ)」という生薬が含まれており、その有効成分であるエフェドリンは交感神経刺激作用を持ちます。このエフェドリンは母乳中に移行しやすく、母乳を飲んだ乳児が夜泣きを繰り返したり、興奮状態に陥ったり、脈拍が乱れるなどの有害事象が報告されています。天然由来だから安全という安直な判断は捨て、薬理作用に基づいた冷静な選択が不可欠です。