M-1グランプリの審査は、審査員の顔ぶれや採点基準の変遷とともに進化を遂げてきました。ファーストラウンドの得点構造を精査すると、歴代の漫才師たちが叩き出した異常値とも言えるスコアが際立ちます。M-1決勝得点ランキングにおいて、今なお燦然と輝く金字塔が、2019年大会でミルクボーイが叩き出した681点(700点満点中、得点率97.3%)です。
立川志らくが「97点」、松本人志が「97点」、上沼恵美子が「98点」を投じるなど、7名の審査員全員が96点以上をつけるという空前絶後の光景が生まれました。「コーンフレーク」のネタで見せた「行ったり来たり漫才」は、システムとしての新奇性と笑いの爆発力が完璧に合致した瞬間であり、M-1審査員歴代最高得点の象徴として語り継がれています。
得点構造の歴史的推移を振り返る上で欠かせないのが、2004年のアンタッチャブル(673点)や、2006年に史上唯一の「最終決戦満票(7票すべて獲得)」を成し遂げたチュートリアルです。当時のテレビ朝日スタジオの異様な熱気は、演出陣が「セットに金をかけてほしい」と編成局に直訴し、六本木のテレ朝本社スタジオへと舞台を移した制作側の執念とも共鳴していました。
一方で、審査員の評価が割れた名勝負も見逃せません。特に敗者復活戦からの歴代優勝者であるサンドウィッチマン(2007年)とトレンディエンジェル(2015年)は、大井競馬場や六本木ヒルズアリーナの極寒の野外ステージから這い上がり、本選ファイナリストたちの空気を一変させました。敗者復活組の持つ「予選落ちからの反骨心」と「客席を味方につけた圧倒的な勢い」は、採点表の序列を瞬時に覆す破壊力を持っていたのです。