日本人選手のMLB移籍を巡っては、ファンの間でいくつかの根強い誤解が存在します。報道各社の取材データおよび労使協定(CBA)の規定に基づき、その真相を検証します。
ネット上で頻繁に見られるのが、「ポスティングシステムを使えばどの球団も莫大な移籍金を得られる」という認識です。しかし、旧制度(最高入札額を提示した1球団のみと独占交渉・入札額全額がNPB球団へ)から現行ルール(選手が自由に全球団と交渉し、契約総額に応じたパーセンテージが譲渡金となる方式)へ変更されたことで、球団の実入りは「選手が勝ち取った年俸総額」に完全に連動する形となりました。
さらに見落とされがちなのが、いわゆる「25歳ルール(海外アマチュアFA規定)」です。25歳未満かつプロ実績6年未満の選手がメジャー挑戦する場合、契約金や年俸が大幅に制限されたマイナー契約しか結べず、NPB球団に入る譲渡金も数千万円〜数億円程度に激減します。かつて大谷翔平が23歳で渡米した際、莫大な契約金を放棄して夢を優先した選択は、ビジネス面では極めて異例の決断でした。
また、「日本人投手はすぐに肘や肩を壊す」というネット上の言説についても、客観的なデータは異なる側面を示しています。MLB全体で投手の肘靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受ける割合は年々増加しており、これは日本人投手に特有の問題ではなく、MLB公式球の滑りやすさ、硬いマウンド、そして極限まで高められた球速と回転数による全身への負荷が原因であるとバイオメカニクス専門家からも指摘されています。