グッドイナフが2017年にブランド展開を完全終了した際、ファッション業界および長年のファンコミュニティには激震が走りました。公式から大規模な記者会見が開かれることはなく、シーズンの終了とともに静かにその役目を終えたため、ネット上では「売上不振で倒産したのではないか」「権利関係のトラブルがあったのか」といった根拠のない憶測が飛び交いました。
しかし、業界関係者への取材および藤原ヒロシ氏が過去のメディアインタビューや自著で語ってきた証言を総合すると、グッドイナフ ブランド終了 理由の本質は「ブランドという旧来のビジネスシステムの完結」にあります。
1990年代初頭の設立当時、グッドイナフは「自分たちが本当に着たい服を、着たい分だけ作る」という極めてインディペンデントな実験室として機能していました。しかし、裏原ブームの過熱とともに生産規模は拡大し、全国への卸販売や定期的なコレクション発表を義務づけられる「アパレルビジネスの標準サイクル」に組み込まれていきました。毎シーズン決まった型の服を企画し、工場に発注し、在庫を管理してデリバリーする――。この硬直化したアパレル構造そのものが、常に身軽で実験的なクリエイティブを志向する藤原ヒロシ氏のスタンスと乖離していったことが、2017年の幕引きにおける最大の引き金となりました。
加えて、共同設立者であったスケートシング(スケシン)氏が2011年に自身のブランド「C.E(シーイー)」を立ち上げ世界的な成功を収めるなど、初期メンバー個々のクリエイティブ活動が成熟したことも、グッドイナフという母体を自然に発展的解消へと導いた大きな要因です。