現在でこそ坊主頭が代名詞となっている人気芸人たちも、最初からそのヘアスタイルだったわけではありません。彼らが髪を捨て去るに至った過去のドラマや自著での告白には、プロのお笑い芸人としての覚悟が色濃く反映されています。
スキンヘッド芸人の筆頭格であるバイきんぐ小峠は、かつてパンクロックに心酔していた20代前半、長髪やモッズ風のヘアスタイルに強いこだわりを持っていました。しかし、20代半ばから急速に頭頂部の抜け毛が進行。当時の心境について、バラエティ特番の回想トークで「風が吹くたびに手で頭を押さえ、他人の視線が生え際に注がれる恐怖に怯えていた。あの頃が人生で一番惨めだった」と赤裸々に語っています。ある日、相方の西村瑞樹からも指摘を受け、意を決して風呂場で頭を剃り上げた瞬間、憑き物が落ちたように視界が開けたといいます。コンプレックスから解放された小峠は、持ち前の攻撃的なツッコミに迷いがなくなり、2012年の『キングオブコント』制覇へと突き進む契機となりました。
2021年の『M-1グランプリ』を史上最年長で制した錦鯉の長谷川雅紀も、かつては全く異なるビジュアルでした。札幌の吉本興業に所属していた若手時代、ホスト風のロングヘアやウルフカットを施し、スタイリッシュな芸人を目指していた時期がありました。しかし、鳴かず飛ばずのまま上京し、40代を迎える頃には薄毛と白髪が同時に進行。貧困生活の中で散髪代すら事欠く状況に追い込まれ、バリカンで自ら刈り上げたところ、相方の渡辺隆から「バカっぽさが際立って最高に面白い」と絶賛されました。哀愁漂う中年男性が、頭を丸めて白いスーツを身に纏い「こんにちはー!」と叫ぶ狂気のスタイルは、髪型への執着を捨てたことで完成した奇跡のパッケージでした。
また、あばれる君のように「一度も髪を伸ばす余地がなかった」という異色のケースも存在します。高校の山岳部時代から坊主頭を義務付けられ、大学時代、そしてワタナベコメディスクールに入学した際も「髪型に悩む時間が無駄だ」と丸刈りを貫きました。公の場での取材でも「坊主頭でいる限り、自分に嘘がつけない。泥にまみれてもサボれない」と語っており、キャラクターの誠実さと直結したストイックな選択であることが伺えます。
さらに見逃せないのが、罰ゲームで坊主になった芸人たちのその後の展開です。コロコロチキチキペッパーズのナダルは、番組のドッキリ企画や罰ゲームで頭を丸めた際、特徴的な甲高い声と異様なプライドの高さが丸刈り頭と奇跡的な化学反応を起こし、狂気的なキャラクターが確立。番組終了後も髪を伸ばすことなくスタイルを維持し、唯一無二のポジションを築き上げました。