歯磨き粉のパッケージ裏に記載されている「清掃剤」という名称は、一般的には研磨剤を指します。無水ケイ酸、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウムなどが代表例です。これらの微粒子は、歯の表面に付着したステイン(着色汚れ)を物理的に削り落とす役割を果たします。
ここで注目すべき指標が、国際規格(ISO 11609)で規定されているRDA(放射性象牙質摩耗度)です。日本国内の市販品にはRDA値の明記義務がありませんが、一般に数値が100を超えると摩耗性が高く、150以上は歯質の弱い日本人にとってリスクが極めて高いと評価されます。
特に警鐘を鳴らしたいのが、即効性の白さをアピールする安価なホワイトニング歯磨き粉の真相です。日本の薬機法上、過酸化水素などの漂白成分を市販の歯磨き粉に配合することは禁じられています。つまり、ドラッグストアで手に入る安価な製品がアピールする「白さ」の正体は、化学的な脱色ではなく、粗い粒子で歯の表面を削り取ってステインを落とす力学的作用に過ぎません。
粒子の粗い研磨成分を含むペーストを日常的に使い続けると、厚さわずか1〜2ミリメートル程度しかないエナメル質が薄くなり、その下にある黄色味を帯びた象牙質が透けて見え始めます。白くするために磨いていたはずが、結果として歯が黄色く見えたり、冷たい水がしみる知覚過敏悪化の原因となったりするケースが後を絶ちません。一度削れて消失したエナメル質は、人体組織のように自然再生することはありません。