本症候群の恐ろしさは、体験している本人にしかその光景が見えない「主観的孤立」にあります。周囲の人間からは普段通りに部屋で座っているようにしか見えないため、幼少期に発症した当事者は「嘘つき」「テレビの見すぎ」「お化けが出たと騒いでいる」と親や教師から叱責され、トラウマを抱える例が後を絶ちません。
ウェブ上のコミュニティやSNS、知恵袋などに投稿された当事者の生々しい手記を検証すると、共通する恐怖のプロファイルが浮かび上がります。
「小学校3年生の修学旅行の夜、天井の木目が急激に巨大化して自分の顔面数センチまで落ちてきた。声を出そうとしても喉が引きつり、隣に寝ている友達の手が巨大なパンのように見えて恐怖で震えた。誰にも信じてもらえないと思い、大人になるまで20年間秘密にしていた」(30代会社員・男性)
「仕事の締切前、徹夜が続いていた日の夕方。オフィスのパソコンのモニターが急激に遠ざかり、まるで望遠鏡を逆から覗いたかのような光景になった。同僚の声だけが甲高く早送りで聞こえ、脳梗塞で倒れるのではないかと過呼吸になった」(40代デザイナー・女性)
こうした実態から分かるのは、患者が直面する苦痛の核心が「見え方の異常」そのもの以上に、「正気を失ってしまったのではないか」「精神に異常をきたしたのではないか」という精神崩壊への恐怖にあるという点です。家族や周囲の人間が「脳のセンサーが一過性に誤作動を起こしているだけで、視力や精神が壊れたわけではない」という正しい医学的知識を持って接するだけで、患者のパニックは大幅に軽減されます。