倒産する運送会社に残された従業員を分析すると、ある共通した心理的トラップが見えてきます。それが組織心理学で指摘される正常性バイアスと「コンコルド効果(サンクコスト効果)」です。
給料の遅配や不合理な運行指示に直面しても、多くのドライバーは「長年勤めてきた会社だから社長も何とかしてくれるはずだ」「業界全体が厳しいのだから、うちだけじゃない」と都合の良い解釈をして危険サインから目を背けてしまいます。また、「ここまで我慢して勤めたのだから、今辞めたら退職金がもらえるか分からない」という執着が、沈みゆく船と運命を共にする悲劇を生み出しています。
プロの労働・キャリア専門家の見地から、会社に踏みとどまるべきか、即刻退避すべきかの明確な判断基準を提示します。
この会社に踏みとどまって良い条件
- 会社が荷主に対して粘り強く運賃交渉を行い、燃料サーチャージや待機時間料の収受実績を公開している。
- 法令遵守意識が高く、運行前点検での指摘事項に対して迅速に部品交換や修理が行われる。
- 経営陣が従業員に対して四半期ごとの売上推移や収支状況をオープンに説明している。
直ちに脱出・転職活動を開始すべき危険な条件
- 給与の遅配、分割振込、または経費立て替え分の精算遅延が1度でも発生した。
- タイヤの溝がない状態や警告灯が点灯した状態での運行を強要される。
- 燃料カードやETCカードが利用停止になり、ドライバー個人への負担転嫁が始まっている。
- 社内のキーマン(運行管理者、ベテラン配車マン、経理)が相次いで退職している。
会社の破綻は、ドライバー個人がどれだけ汗を流して真面目にハンドルを握っても食い止められるものではありません。経営責任と個人の生活は明確に切り離すべき「心理的バウンダリー(境界線)」を持たなければ、不渡りによる連鎖倒産の犠牲者となってしまいます。