TOEICリーディングテストで時間が足りなくなる最大の要因を「英語を読むスピードが遅いからだ」と捉えているなら、それは根本的な誤解です。現場での実態調査とスコア分析が示す真実は、読解スピードそのものよりも「特定の問題で立ち止まってしまう思考のロック(認知の膠着)」にあります。
行動経済学で言う「サンクコスト効果(埋没費用の罠)」が、試験中の受験者の脳内では猛威を振るっています。Part5の短文穴埋め問題で、選択肢を前にして「あと30秒考えれば思い出せるかもしれない」と粘ってしまい、結果として1問に90秒以上を費やす――この数十秒のロスが3〜4回重なるだけで、Part7の長文読解で解くはずだった大問1つ分の時間が跡形もなく消滅します。
ETS(Educational Testing Service)が設計するTOEICテストは、高度な情報処理能力と時間制限下での意思決定力を測る適性試験でもあります。Part7は後半に進むほどマルチプルパッセージ(複数の文書照合)が増え、疲労した脳に重い認知負荷をかけてきます。前半で時間を浪費した焦りが精神的パニックを引き起こし、視野狭窄に陥ることで、読めば簡単に解けるはずの平易な設問すら落とすという負の連鎖が生じるわけです。