「近所の公園で満開の桜を見つけた」――毎年2月上旬から中旬にかけて、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSにはこうした写真付き投稿が急増します。しかし、リプライ欄やYahoo!知恵袋などのQ&Aコミュニティでは「それは河津桜ではなく紅梅です」「いや、寒緋桜(カンヒザクラ)ではないか」といった激しい同定論争が繰り広げられるのが初春の恒例風景となっています。
なぜここまで早咲き桜と梅は混同されてしまうのか。その真相は、品種改良と近年の温暖化に伴う「色彩の錯覚」と「開花期の重複」にあります。
一般に「桜=淡いソメイヨシノの白ピンク」「梅=濃い紅色」という固定観念を持つ人が少なくありません。しかし、静岡県河津町発祥の「河津桜」や沖縄などで親しまれる「寒緋桜」、あるいは各地の庭園に植栽される「熱海桜」などの早咲き桜グループは、花弁の色が驚くほど濃厚なピンク色を帯びています。一方で、梅の中にも淡い桃色や純白の花を咲かせる白梅(豊後系や野梅系など)が数多く存在します。色味の先入観だけで判断しようとする一般の散策者が、2月の濃密なピンク色の花を見て「梅に違いない」、あるいは「もう桜が満開だ」と両極端の誤認を起こしてしまう構造がここにあります。
都立庭園の植栽管理スタッフへの取材データでも、2月中旬の来園者から寄せられる問い合わせの約4割が「いま咲いている鮮やかなピンクの花の樹種確認」に集中している実態が浮き彫りになっています。花の色という不確定な情報に惑わされず、前述した「花柄の長さ(軸があるか)」と「花びらの切れ込み」を確認することこそが、SNSの誤同定スパイラルから抜け出す唯一の自衛策です。