SNSやネット掲示板では、設備の解体工事が目撃されるたびに「安中製錬所がついに解体されて更地になる」「跡地には商業施設ができる」といった極端な言説が散見されます。しかし、これらは現地の実情を知らない者による誤解です。
現在行われている撤去工事は、稼働を停止した鉱石製錬関連の老朽建屋や、耐震基準・安全管理の観点から役割を終えた設備に限定されています。むしろ、東邦亜鉛にとって安中製錬所は、グループ全体の再建を左右する「リサイクル・高機能素材の中核ハブ」です。
世界的な脱炭素化の進展に伴い、鉱石を海外から船で運び、莫大な電力を消費して製錬する従来手法は、巨額の環境負荷と為替・資源リスクを伴います。一方で、国内に眠る基板や廃家電からレアメタルや貴金属を取り出し、再資源化する技術は、経済安全保障の観点からも極めて高い国家的価値を有しています。
同社が採算の合わない鉱石製錬を切り捨てたのは、製錬所を潰すためではなく、製錬所の心臓部を次世代産業に合わせて入れ替えるための外科手術に他なりません。「安中は終わった」という言説は、産業構造の転換を表面的な設備停止と混同した短絡的な見方に過ぎません。