ネット上の掲示板やSNSでは「航大に入学できればパイロット人生は約束されたようなもの」という言説が散見されますが、これは現場のリアルを知らない楽観論です。航大生は宮崎本校での基礎訓練、帯広分校での単発機(シーラスSR22)フライト、仙台分校での双発機(バロンG58)による計器飛行訓練と、約2年間にわたる過酷なプロセスを歩みます。
現場取材や訓練生OBの手記でも語られている通り、訓練生を最も苦しめるのが「実地試験でのフェイル審査」です。フライト訓練は毎回が実質的なテストであり、規定のフライト時間内に所定の操縦技量や安全判断基準に達しない場合、プログレスチェック(進度審査)に回されます。そこで不合格となれば、追加訓練の猶予は与えられるものの、最終的に技量向上不可とみなされれば「退校処分(フェイル)」が下されます。
実際の航空大学校フェイル率は年によって変動しますが、1期あたりおおむね数名、比率にして3〜5%程度が存在します。「たった数%」に見えるかもしれませんが、過酷な受験勉強と身体検査を勝ち抜いてきた優秀な同期の中で、自分だけが空を飛べなくなる恐怖と日々隣り合わせで過ごす精神的負荷は想像を絶します。同室の仲間と夜遅くまで手順書を暗唱し、イメージトレーニングを繰り返す極限の生活を乗り切るメンタルの強靱さが求められます。