受診先を迷う最大の心理的要因は、「耳鼻科に行ったら鼻の薬しか出ず、目薬をもらうために別の眼科へ並び直さなければならないのではないか」という二度手間の懸念です。この点について、厚生労働省の保険診療ルールおよび医療現場の実務実態を整理します。
結論から言うと、耳鼻咽喉科で抗アレルギー点眼薬を処方してもらうことも、眼科で抗ヒスタミン内服薬を処方してもらうことも、医学的・制度的に何ら問題なく可能です。
医師免許を持つ医師であれば、自身の専門領域外であっても標準的な薬を処方する裁量が認められています。実際、花粉症のハイシーズンには、耳鼻科医が鼻炎の内服薬と一緒に「アレジオン点眼液」や「パタノール点眼液」といった代表的な抗アレルギー点眼薬をセットで処方する光景は日常茶飯事です。同様に、眼科でも目のかゆみを訴える患者に対して「アレグラ(フェキソフェナジン)」や「ビラノア」「ルパフィン」などの第2世代抗ヒスタミン内服薬を併せて処方することが一般的です。
しかし、ここには「専門科ならではの処方の限界」という重大な境界線が存在します。
例えば眼科領域において、重症の結膜炎に対して使われるフルオロメトロンなどの「ステロイド点眼薬」は、副作用として眼圧上昇を招き、緑内障を引き起こすリスクがあります。そのため、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)による眼圧測定や角膜の観察ができない耳鼻科では、安全管理上ステロイド点眼薬の処方を躊躇・拒否されるのが通常です。同様に、耳鼻科特有の専門治療薬である強力なステロイド点鼻薬の適切な指導や、副鼻腔炎を合併している場合の抗生剤選択などは、眼科の守備範囲を明らかに超えています。
軽症から中等症の範囲であればどちらか1つの診療科で内服薬・点眼薬をまとめて受け取れますが、局所の症状が重篤化している場合は、その部位の専門医でなければ踏み込んだ薬剤処方は受けられない実態を把握しておく必要があります。