船越英二さんには、名俳優としての顔のほかに「一流の旅館経営者」というもう一つの顔がありました。神奈川県の名湯・湯河原温泉に1972年にオープンした高級旅館「旅荘 船越」は、英二さんの美意識とホスピタリティが隅々まで行き届いた名宿として、多くの政財界人や文化人に愛されました。
英二さんは撮影の合間を縫って自ら湯河原へ足を運び、庭の手入れや客のもてなしに情熱を注ぎました。息子である英一郎さんも、この旅館で幼少期から「人を喜ばせることの尊さ」を父の後ろ姿から学んだと語っています。
そんな船越英二さんは、2007年3月17日、脳梗塞のため84歳で静かに息を引き取りました。最期まで品格を失わず、家族に見守られながらの旅立ちでした。愛された「旅荘 船越」は時代の変化とともに惜しまれつつ役目を終えましたが、そこで培われたもてなしの心は、英一郎さんの現場への気配りやサービス精神の中に色濃く生き続けています。