20世紀以降、数多くの巨匠指揮者がこの名曲に挑み、歴史的録音を残してきました。そのアプローチの違いを聴き比べることは、クラシック音楽鑑賞の最大の醍醐味の一つです。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1944年録音、通称「ウラニアのエロイカ」)
第2次世界大戦末期のウィーンで録音された、20世紀の演奏史に燦然と輝く伝説的怪演です。巨大なテンポの伸縮とすさまじい緊迫感によって、人類の破滅と魂の救済を生々しく描き出しています。モノラル録音の枠を超えた凄絶なエネルギーは、今なお聴く者を圧倒します。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1970年代録音)
フルトヴェングラーの主観的ドラマ性とは対照的に、カラヤン盤は完璧なオーケストラ・ドライヴと機能美が極限まで発揮された名演として高い評判を維持しています。推進力あふれるテンポ設定、磨き抜かれたレガートと圧倒的な重厚感が共存し、エロイカの持つシンフォニックな構築美を最も明快に堪能できる決定盤です。
現代のピリオド(古楽器)アプローチと室内管弦楽団による名盤
近年の録音では、ジョン・エリオット・ガーディナーやパーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンなど、ベートーヴェンが本来指定した快速なメトロノーム記号に肉薄する演奏が主流となっています。小編成ならではの引き締まったアンサンブルと透明度の高いスコアの響きは、作品が初演当時に持っていたアヴァンギャルドな衝撃を現代に蘇らせています。