実在しないはずのピンク病院が、なぜこれほど強固な隠語・スラングとして定着したのでしょうか。その発祥を探ると、1960年代後半から1980年代にかけての昭和のメディア空間に行き着きます。
当時、成人向け週刊誌や実話系三面記事では、性的なニュアンスを含む事象に対して「ピンク」を冠する表現(ピンク映画、ピンサロ、ピンク電話など)が多用されていました。そうした中、病院内で起きた医師と看護師のスキャンダルや、一部の個人病院で起きたセクハラ事案、あるいは入院患者への不適切な接触事件などが、扇情的な見出しとして「〇〇ピンク病院の乱脈」といった形で誇張報道されたことが発端とされています。
さらに1980年代以降、アダルトビデオ(AV)や成人向け漫画の定番ジャンルとして「白衣の天使」をモチーフにしたシチュエーションが爆発的な人気を博しました。創作物の中で描かれた「秘密のナースコール」「特別治療室」といったフィクションの世界観が、口コミやネット掲示板(2ちゃんねる等)の普及によって「どこかに本物のピンク病院があるらしい」という都市伝説へと変貌を遂げていったのです。