もともと天狗の鼻が折れるという故事は、修験道の聖地である鞍馬や深山に伝わる妖怪・天狗が、己の神通力を過信して高慢になり、僧侶や仏法の前で赤恥をかかされる伝説に由来する。鼻が高いことは自負心の強さを表し、それがポキリと折れる様は、人間が慢心ゆえに自ら招く破滅を象徴している。
認知心理学の最新の研究でも、人間は一度大きな成功体験を得ると、自らの能力を過大評価する「認知のバイアス」に陥りやすいことが指摘されている。周囲からの賛辞に包まれるうちに自分の弱点が見えなくなり、他者の忠告に耳を貸さなくなる。そして、最も無防備になった瞬間、現実に足をすくわれるのだ。