社号に関して最も広まっている誤解のひとつが、「伊勢神宮」という社号の存在です。三重県伊勢市に鎮座するこの神社は、案内板や観光情報では便宜上「伊勢神宮」と表記されますが、宗教法人としての登録および正式な名称は地名のない単なる「神宮(じんぐう)」です。
神道において「神宮」といえば伊勢の内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)を中心とした125社の総称であり、他のいかなる神宮とも一線を画す「本宗(ほんそう)」として君臨しています。他の神宮が「明治神宮」や「橿原神宮」と地名や元号を冠しているのに対し、伊勢の神宮だけが固有名称なしで成立している点こそが、別格の証拠といえます。
また、愛知県名古屋市に鎮座する熱田神宮は、天皇自身を祀っているわけではないにもかかわらず古くから「神宮」を名乗っています。その理由は、三種の神器のひとつである「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」を御神体として祀っているためです。皇位継承の証である神宝そのものを奉斎していることから、天皇を祀る社と同等以上の尊崇を受けてきたという極めて稀有な特例です。