兄弟の演技の根底には、父・柄本明が長年率いてきた劇団東京乾電池の空気感が深く脈打っている。幼少期から劇場が日常の居場所であり、楽屋の匂いや舞台袖の緊張感、劇団員たちの泥臭いエチュード(即興劇)を全身で吸い込んで育った。この環境こそが、二人に型にハマらない自由な感性を植え付けた。
柄本明の演技指導は「演じるな、そこに居ろ」という言葉に集約されると言われる。セリフを上手に喋ることよりも、役にどう肉体を生み落とすか。セリフのない瞬間の佇まいにこそ役者の地力が出ることを見抜いていた父の教えが、柄本佑の佇むだけで画になる色気や、柄本時生の独特な間を生み出す原動力となっている。