畑に残った完全に青い未熟果について、ネット上では「ジャガイモの芽と同じ猛毒ソラニンがあるから絶対に食べてはならない」という警鐘と、「海外では普通に揚げて食べている」という擁護論が入り乱れ、激しい情報錯綜が続いています。この問題に終止符を打つべく、天然毒素の薬理データを整理します。
厳密な生化学的分類において、青いトマトに含まれる主たるアルカロイド配糖体はソラニンではなく「トマチン(Tomatine)」です。ジャガイモに含まれるソラニンやチャコニンと同系統のステロイドアルカロイド骨格を持ち、害虫や菌類から自らを守るための天然防御物質として機能しています。東京都福祉保健局や農林水産省の安全性データによると、トマチンの半数致死量(LD50)はソラニンに比べて毒性強度が大幅に低く、極端に神経質になる毒物ではありません。
完全に青い未熟果1kgあたり約500mg〜1,000mgのトマチンが含まれていると推計されますが、果実が完熟して赤くなるにつれてトマチンは無毒な成分へと自己分解され、赤熟果では未熟時の100分の1以下(ほぼ検出限界レベル)まで自然減退します。成人が青いトマトを一度に生で数キロ単位で大量暴食しない限り急性毒性(嘔吐、下痢、腹痛など)を発症するリスクは極めて低減されていますが、消化器官の未発達な幼児や高齢者が生のまま多量摂取することは厳に慎むべきです。
安全性を担保しつつ、青い未熟果の爽やかな酸味と硬い果肉を活かす調理法として、世界各国で親しまれている青いトマトの美味しいレシピが存在します。トマチンは水溶性で熱に対してもある程度の安定性を持つため、加熱処理や塩漬け・酸処理を経ることでえぐ味を中和し、極上の逸品へと昇華させることが可能です。
アメリカ南部発祥の郷土料理「フライド・グリーン・トマト」は、硬い青トマトを約7〜8mmの厚さにスライスし、塩胡椒を振って小麦粉、溶き卵、粗挽きコーンミール(またはパン粉)をしっかりとまぶして多めの油でカリッと揚げ焼きにします。未熟果特有のキリッとした酸味が衣の香ばしさと調和し、ビールや肉料理の最高のアカンパニメントとなります。また、薄切りにして10%濃度の塩水でアク抜きした後に穀物酢、ローリエ、粒胡椒、砂糖で漬け込む「青トマトのスパイスピクルス」も、ピクルス特有の心地よい歯ごたえを存分に楽しめる伝統的な保存食です。