NHK連続テレビ小説の記念すべき第100作目となった『なつぞら』の主題歌として書き下ろされた「優しいあの子」。ヒロイン・広瀬すずが北海道の大自然の中で育ち、やがて黎明期のアニメーション業界へと飛び込んでいく物語の序章として、毎朝日本中に届けられました。NHK公式の発表資料や当時の音楽メディアの取材によると、オファーを受けた草野マサムネは楽曲制作に先立ち、真冬の北海道・十勝地方を単身訪問しています。
一面の銀世界と肌を刺すような極寒を五感で受け止めた草野は、「厳しい冬を乗り越えてこそ訪れる春の圧倒的な喜び」を肌で実感したと振り返っています。単に明るく爽やかな朝の応援歌を仕立てるのではなく、北の大地が抱える過酷な自然の現実、そして開拓者たちが味わった労苦の記憶をメロディの底流に敷き詰めることこそが、作家・草野マサムネの誠実な矜持でした。
テレビ特番や雑誌インタビュー等で明かされた本人の言葉にもある通り、タイアップ作品の舞台である北海道に対する敬意と、厳しい現実を生きる人々への静かな眼差しが、この曲の出発点となっています。「連続テレビ小説 なつぞら 主題歌」という巨大な看板を背負いながらも、耳あたりの良い記号的なポップスに終始しなかった理由が、この厳冬期の現地取材に凝縮されています。