扇状地はどこも一様な環境ではありません。谷口から下流に向かって「扇頂(せんちょう)」「扇央(せんおう)」「扇端(せんたん)」の3つのゾーンに分かれており、それぞれ土壌の粒の大きさと水の挙動が大きく異なります。この違いがそのまま土地利用の差となって現れます。
① 扇頂(谷口付近):
扇の要にあたる最上流部です。川の流速が落ち始めた直後であるため、大粒の巨石や礫がゴロゴロと堆積しています。傾斜はやや急ですが谷口から直接水を取りやすいため、古くから集落が立地したり、下流への取水堰や用水路の起点として活用されたりしてきました。
② 扇央(中央の広大な傾斜部):
扇状地の中で最も広い面積を占めるエリアです。砂利や粗い砂が分厚く堆積しているため、地表の水が地中深くにグングン吸い込まれてしまう「水無川(みずなしがわ)」と呼ばれる現象が発生します。雨が降った直後以外は川底が干上がって見え、地表に水が残りません。保水力が極端に低いため水田には使えず、畑や果樹園、スギ・ヒノキの雑木林として利用されてきました。
③ 扇端(末端部):
扇状地が平野へと溶け込む最下流部です。粒の細かい砂や粘土が堆積しており、扇央の地下を潜り抜けてきた地下水が水圧によって地表へ押し出される「湧水帯(ゆうすいたい)」が帯状に並びます。一年中清らかな水が豊富に手に入るため、古くから農家が集まって集落(湧水集落)を形成し、水を張る必要がある水田地帯が一面に広がっています。