本作を語る上で欠かせないのが、巨匠・久石譲による繊細かつ叙情的な音楽の存在である。従来のジブリ作品に見られた壮大なオーケストレーションとは一線を画し、マンドリンやバヤン(ロシアのアコーディオン)を取り入れたノスタルジックな音色は、大正から昭和初期へと向かう劇中の時代背景と見事に調和している。
戦争の足音が近づく暗雲立ち込める時代において、過酷な運命を懸命に生きた人々の息遣いが、音楽の端々に宿っている。アニメーション制作業界において本作が最高峰の歴史長編アニメーションと称される理由は、作画技術の高さだけでなく、映像と久石譲の音律が一体となり、失われた昭和の空気感や叙情美を見事に描き切った点にある。