海外の映画批評家から「神がかった演技」と絶賛されたのが、小林正樹監督の映画『切腹』だ。武士道の虚飾を暴く浪人・津雲半九郎役で見せた静かなる怒りと凄絶な殺陣は、今なお世界中で語り継がれている。作品がカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞した陰には、撮影中に真剣さながらの緊張感で極限まで肉体を追い詰めた役者の覚悟があった。
さらに、黒澤明監督が晩年に手がけた映画『乱』では、シェイクスピアの『リア王』をベースにした老武将・一文字秀虎を演じた。当時50代前半だった彼が、80歳を超える老残の城主を演じるため、連日4時間に及ぶ特殊メイクに耐えたエピソードは有名だ。炎上する城から呆然と階段を降りていく伝説のシーンは、やり直しのきかない一発勝負の中で生まれた、映画史に残る奇跡である。