TBSテレビが世界陸上の国内独占放送を開始した1997年。その初代メインキャスターに抜擢されたのが織田裕二だった。当時、映画やドラマ『踊る大捜査線』の大ヒットで国民的俳優の地位を確立していた彼だったが、スポーツ中継の司会は全くの未開拓領域。しかし、彼が持ち込んだのは洗練されたアナウンス技術ではなく、アスリートへの剥き出しのリスぺクトと、一切の計算がない純粋な興奮だった。
パートナーを務めた中井美穂との相性も抜群だった。感情を爆発させる織田を、元フジテレビのアナウンサーである中井が絶妙な間合いでフォローし、進行の舵を執る。この二人組みが創り出した独特の空間は、深夜帯の長距離中継であっても視聴者を画面に釘付けにした。「地球に生まれてよかった!」「世界一速い男が決まるんです!」といった語録の数々は、番組の枠を飛び越えて社会現象にまでなった。