では、客観的なデータで見た場合、厄年に本当に災難は起きているのでしょうか。保険会社や民間調査機関が定期的に実施している意識調査の集計データを分析すると、興味深い現実が浮かび上がってきます。
厄年を経験した男女数百人を対象にしたアンケート結果によると、「本厄の1年間に、人生を揺るがすような大きな災難や不幸があった」と回答した人は全体の約20%〜25%程度にとどまります。逆を言えば、本厄でも約75%〜80%の人は「特に何も起きなかった」あるいは「普段通りの日常だった」というのが統計的な現実です。数学的な確率論から見れば、厄年だからといって極端に不運の発生率が跳ね上がるわけではありません。
ところが、厚生労働省が公表する人口動態統計や健康保険組合のレセプトデータを医療関係者が精査すると、まったく別の側面が見えてきます。厄年とされる年齢は、人間が生物学的な身体の転換期を迎えるタイミングと極めて高い相関を示しているのです。
医学的観点から見ると、男性の42歳や女性の33歳・37歳という設定は驚くほど理にかなっています。20代の頃と同じような不規則な食生活や徹夜を続けていると、40代を迎えた身体は急速に悲鳴を上げ始めます。ホルモンバランスの変化に伴い自律神経が不安定になり、生活習慣病や悪性腫瘍の罹患率が統計的にも明確に跳ね上がるのです。
先人たちは近代医学の知識を持たなかったものの、長年の経験則から「この年齢になると急に体調を崩す者が増え、命を落とすリスクが高まる」という知見を体得し、それを警告するために「厄年」というパッケージにして後世に残したと考えれば、単なる迷信と切り捨てることはできません。