まず気になるのが屋号の読み方です。魚籠屋の読み方は「びくや」と読みます。「魚籠(びく)」とは、渓流釣りなどで釣り上げた魚を生かしたまま入れておく竹編みの籠のこと。この風情ある店名が示す通り、榛名山の清冽な水と豊かな自然の恵みをそのまま提供する場として、1971年の創業以来半世紀以上にわたって暖簾を守り続けています。
店舗が位置するのは、群馬県高崎市榛名山町360。屈指のパワースポットとして名高い榛名神社へと続く山道の道中にあります。歴史を感じさせる重厚な茅葺き屋根の日本家屋は、現代の建築では決して再現できない独特の陰影とぬくもりを放っており、引き戸を開けた瞬間に鼻腔をくすぐる薪と炭の香りが旅情を一気に高めてくれます。公式の案内資料や創業時の背景を紐解くと、群馬県内でも早い時期から本格的な川魚料理を専門に手掛け、山菜や猪豚(いのぶた)、手打ちの田舎蕎麦など、上州・榛名ならではの食文化を継承してきた先駆者であることがわかります。