猗窩座が戦闘時に必ず口にする「術式展開」とは、自身の血鬼術である「破壊殺(はかいさつ)」を発動するための絶対的な起動トリガーです。彼がこの言葉とともに拳を構えると、足元に青白い光を放つ雪の結晶のような陣が広がります。
この陣の正体こそが「破壊殺・羅針(らしん)」と呼ばれる索敵・感知システムです。羅針が展開されている間、猗窩座は相手が放つ「闘気(殺気や戦意、肉体の動き)」を磁石のように正確無比に感知します。どれほど高速かつ死角からの攻撃であっても、相手の闘気の強さに応じて自動的に最適な迎撃軌道が弾き出されるため、実質的にすべての攻撃に即座にカウンターを合わせることが可能となります。
また、術式展開を行う際の独特な低い姿勢と両拳を構える動作は、彼が人間時代に修めていた武術「素流(そりゅう)」の基本構えそのものです。鬼となって過去の記憶を完全に失い、何百年もの時が流れてもなお、肉体に刻み込まれた武術の所作だけは寸分狂わず残り続けていたという事実は、彼のストイックな戦闘スタイルの根底を物語っています。