競馬ファンなら一度は耳にしたことがある「カンパイ」という言葉。祝杯の乾杯ではなく、発走のやり直しを意味する公式用語です。スタート地点から約200メートル前方に立つ走路監視員が競馬でカンパイを告げる赤旗を激しく左右に振った場合、そのレースは不真正発走となり、スタートがやり直されます。
カンパイという語源には諸説あり、明治初期の居留地競馬において外国人スターターが叫んだ「Come back!(戻れ)」が日本人の耳に「カンパイ」と聞こえたとする説や、中国語のやり直しを意味する言葉に由来する説などが競馬史で語り継がれています。
では、具体的にどのような状況でJRAの発走やり直し理由が成立するのでしょうか。主な要因は以下の通りです。
- ゲート開扉不良:電気系統や機械的なトラブルにより、一部の枠の前扉が開かなかった、あるいは開くタイミングが他枠と明確にズレた場合。
- 発走前の突進・フライング:馬が極度に興奮し、開扉ボタンが押される直前に前扉を体当たりでこじ開けて飛び出してしまった場合(フライング時の旗振り判定)。
- 枠内転倒や重大な装具破損:ゲートが開く瞬間に馬が転倒した、あるいは手綱や頭絡などの重要馬具が破損し、公正な競走能力の発揮が不可能と発走委員が判断した場合。
赤旗が振られた際、騎手には直ちに馬を減速・停止させて発走地点に戻る義務が生じます。もし赤旗を見落としてそのまま全力疾走してしまうと、競走馬が体力を極度に消耗してしまい、馬体検査の結果「疲労著しいため競走除外」となるリスクが生じます。数億円から数百億円規模の馬券売り上げが動く近代競馬において、赤旗の一振りはレースの成立や返還に関わる極めて重大な判断となります。