Webメディア業界の内部で日常的に使われ、一般の読者にも知られるようになった言葉に「コタツ記事」があります。コタツ記事の真相とは、取材記者が事件現場や取材対象者のもとへ一度も足を運ばず、部屋のコタツに入ったまま書けるような記事の総称です。
典型的な例が、テレビのワイドショーやバラエティ番組を視聴しながらタレントの発言をそのまま文字に起こした「テレビ実況記事」、あるいはタレントのSNS(XやInstagram)の投稿と一般ユーザーのリプライを切り貼りしただけの「SNSまとめ記事」です。編集プロダクションの現場関係者は、かつてのインタビュー取材で次のように赤裸々な実態を明かしています。
「朝の生放送番組を見ながら、出演者が少しでも物議を醸しそうな発言をした瞬間にキーボードを叩き、番組終了から15分後には見出しをつけて配信する。取材対象への事実確認など一切しない。1日に1人で6本から8本の記事を量産しなければノルマに届かない」(大手Webメディア元提携ライターの手記より)
こうした超低コスト記事が横行する延長線上に、フェイクニュースの見極め方が問われる悪質なデマや虚偽情報の拡散が存在します。フェイクニュースは、単なる記者の事実誤認だけで生まれるわけではありません。読者の「怒り」「不安」「義憤」「正義感」といった強烈な感情を刺激することでSNS上の爆発的なシェアを狙う、計算された金儲けの手段として設計されているケースが極めて多いのです。
人間は、自分の信じたい情報を肯定する見出しに出会うと、事実確認を怠って反射的に信じ込んでしまう「確証バイアス」を持っています。フェイクニュースの発信者はこの認知心理を巧妙に突いてきます。「〇〇大臣が売国発言」「あの人気タレントの裏の顔が暴露」といったセンセーショナルな見出しを掲げ、一次ソースへのリンクを貼らずに曖昧な伝聞調(「〜との情報が浮上している」「ネット上で波紋が広がっている」)で構成するのが彼らの常套手段です。