マンハッタンレコードの軌跡を紐解くことは、日本のストリートカルチャーの歴史そのものを辿ることに他なりません。同店は1980年、創業者・平川雅夫氏によって設立されました。当時としては極めて先進的だった「アメリカへの定期的な直接買い付け」を行い、オールディーズやブルース、ソウルなどの黒人音楽廃盤ブームを牽引したのが始まりです。
1991年に現在の宇田川町へ移転すると、折からのヒップホップ黄金期(ゴールデンエイジ)の到来と完璧にシンクロします。毎週金曜日の新譜入荷日には、最新のUS盤12インチを誰よりも早く手に入れようと、プロのDJから若手クラバーまでが開店前から長蛇の列を作りました。当時は「マンハッタンでレコードを買えなければ週末の現場でプレイできない」とまで言われたほど、音楽シーンの絶対的なハブとして君臨していたのです。
この時代を象徴するのが、購入時に手渡された「Manhattan Records」のロゴ入りショッパー(レコード袋)です。鮮やかなブルー地にアイコニックな「m」のロゴがデザインされたビニールバッグは、単なる持ち帰り袋を超え、「宇田川町で最新カルチャーを掘っている」ことのステータスシンボルとなりました。若者たちはレコードを持ち歩くためだけでなく、普段の通学や街歩きのサブバッグとしてこのショッパーを誇らしげに掲げ、渋谷の街を青く染め上げたのです。
さらに、同店オリジナルの「スリップマット」も、多くのDJにとってターンテーブルの必需品となりました。耐久性と滑りやすさを兼ね備えた実用性に加え、ブースに置くだけでプロフェッショナリズムを主張できるデザインは、現在も現場のDJたちに愛用され続けています。