国民生活センターに寄せられる衣類トラブルの相談において、依然として上位を占めるのが「洗濯後の極端な縮み・風合い変化・色泣き」です。なぜ洗濯マークを無視するだけで、服は一瞬にして着られない状態へと崩壊してしまうのでしょうか。その背景には、繊維ごとの物理的・化学的特性があります。
代表的な事例が、ウール製品の収縮現象です。ウール繊維の表面には「スケール」と呼ばれるウロコ状の組織が存在します。水分を含んだ状態で洗濯機の水流や脱水による摩擦(揉み作用)が加わると、このウロコが開き、繊維同士がマジックテープのように複雑に絡み合います。これがいわゆる「フェルト収縮」です。一度フェルト化した繊維は元の長さに戻すことが極めて困難であり、体積が最大30〜40%も収縮して生地が硬直してしまいます。手洗い表示桶マークや弱水流の指示を無視して通常コースで回した場合、わずか1回の洗濯で取り返しのつかない事態に陥ります。
さらに近年トラブルが多発しているのが、セルロース系再生繊維であるレーヨンやキュプラのトラブルです。レーヨンは水分子と結びつきやすい性質を持ち、水に濡れるだけで繊維強度が約50%低下し、極端に膨潤します。この状態で乾燥すると繊維が急激に引き締まり、20%以上の激しい縮みや激しい型崩れを生じさせます。タグに記された警告を軽視することは、物理的な破壊プロセスを自ら稼働させていることにほかなりません。