『パジャマな彼女。』が一般的な学園ラブコメと決定的に一線を画していたのは、物語の根幹に横たわる「眠り病」と「生霊」という重苦しいオカルト・サスペンス要素です。
主人公・目覚計佑(めざまし けいすけ)の幼馴染であるヒロイン・音成まくら(おとなり まくら)は、ある日突然、眠ったまま目を覚まさなくなる原因不明の奇病「眠り病」に冒されます。肉体が病室のベッドで昏睡し続ける一方、夜になるとパジャマ姿の「生霊(幽体離脱状態)」となって計佑の部屋に現れるようになります。この生霊の姿と声は、世界中で計佑にしか認識できません。
この構図は、一見すると「二人だけの秘密の夜」という甘酸っぱいシチュエーションに見えますが、一歩引いて観察すると極めて陰湿なホラー構造を孕んでいます。病院のベッドに横たわる無機質な肉体、いつ消滅するか分からない不安定な生霊の存在、そして「もし目を覚まさなければ死んでしまうのではないか」という死生観の恐怖が、読者の無意識に強い緊張感を与え続けました。
さらに、計佑が憧れの先輩である白井雪姫(しらい ゆき)や同級生の茂森まひると心を通わせる裏で、パジャマ姿の生霊・まくらが常に傍らで見つめている構図は、読者に「見えない視線」「抜け出せない罪悪感」という心理的ホラーを感じさせる要因となりました。