本国アメリカで生まれたスウィングの熱気は、日本国内において独自のエンターテインメント文化と融合し、幅広い世代へと浸透していきました。その浸透プロセスには、3つの決定的な起爆剤が存在します。
第1の波は、2004年に公開され社会現象となった矢口史靖監督の映画『スウィングガールズ』です。東北の落ちこぼれ女子高校生たちがビッグバンドジャズに目覚め、クライマックスの演奏曲として披露した『シング・シング・シング』は、全国の学生に「ジャズ=かっこいい」という強烈なインパクトを植え付けました。この映画をきっかけに、全国の中学校・高校の吹奏楽部でビッグバンド編成を導入する動きが急速に拡大しました。
第2の波は、東京ディズニーシーで長年にわたり絶大な支持を集めたレビューショー『ビッグバンドビート(BBB)』です。本格的な生演奏のビッグバンドをバックに、ミッキーマウス自身がドラムスティックを握り、華麗なスティックトワリングと共にジーン・クルーパさながらの激しいドラムソロを叩き出すクライマックスは、パークを訪れる数百万人の観客を熱狂の渦に巻き込みました。
そして第3の波が、世界的なバイラル現象を巻き起こした京都橘高校吹奏楽部による『シング・シング・シング』です。“オレンジの悪魔”の愛称で親しまれる同校は、一糸乱れぬハイテンポなステップと激しいダンスをこなしながら、寸分の狂いもないブラス演奏を両立。米国のローズパレードをはじめ国内外のステージで披露されたパフォーマンス動画はYouTube等で億単位の再生回数を記録し、日本の吹奏楽カルチャーの精緻さとダイナミズムを世界中に知らしめました。