空中を漂う雪虫を手でそっとすくい上げてみると、雪の結晶のように見えた白いふわふわの奥に、黒く小さな虫の体があることが分かります。昆虫学的な分類において、雪虫という名前は特定の1種類の昆虫だけを指す単語ではありません。主にカメムシ目(半翅目)アブラムシ上科ワタムシ科に属する昆虫の総称であり、その代表格がトドノネオオワタムシやケヤキフシアブラムシ、エノキワタアブラムシなどです。
雪虫がまとっているあの白い綿のようなものの正体は、体内の分泌腺から分泌される「蝋物質(ワックス)」です。この蝋物質には、外敵からの防御だけでなく、雨や外気から身を守る撥水効果、さらには非常に小さな体を風に乗せて浮遊させるパラシュートのような役割があります。
雪虫の寿命は成虫になってからわずか数日から1週間程度と極めて短命です。春から夏にかけては羽を持たない形態で特定の樹木の葉や幹で繁殖を繰り返し、秋が深まると越冬準備のために羽を持つ「有翅型(ゆうしがた)」へと変化します。口の器官が退化している個体も多く、彼らが空中を舞っている瞬間は、食事を摂ることもなく自らの命を削りながら産卵場所を目指す、まさに「命がけの引越し」の最中なのです。