ツルバキアは南アフリカを原産とするヒガンバナ科(旧ネギ科)ツルバキア属の宿根草です。日本国内で流通する主要種には、春に甘い香りの花を咲かせるフラグランス種と、初夏から晩秋まで長期間開花するビオラセア種が存在します。ツルバキア・ビオラセア(Tulbaghia violacea)の選抜園芸品種として誕生したのが、美しい白斑を葉の縁にまとう「シルバーレース」です。
本種を語るうえで避けて通れないのが、「ソサエティガーリック」という英名です。葉や茎を傷つけると、料理のニンニクやニラと寸分違わぬ揮発性硫黄化合物(アリシン様成分)の強烈な芳香が立ち上ります。ヴィクトリア朝時代、ニンニクを食べられない上流階級の貴婦人たちが「口臭を気にせずニンニクの風味を楽しめる代用ハーブ」として重宝した歴史がその名の由来とされています。
この成分はアブラムシなどを遠ざける虫除け効果と匂いの発生源として機能する一方、アプローチ沿いや玄関脇、窓の直下に植えると「風が吹くたびにネギ臭が漂う」という家庭内トラブルの火種にもなりかねません。美しい造形美と実用的な防虫性、そして強烈な野性味という二面性を理解することが、本種と付き合う第一歩です。