知能の退行は容赦なく進みました。かつて理解できた数式や外国語が、霧の彼方に消えていく。漢字が書けなくなり、日誌の文章は再び幼いものへと戻っていきます。チャーリィは再び、パン屋の仕事に戻りますが、そこにかつての「何も知らなかった幸せなチャーリィ」はいませんでした。自分がかつて天才であったという微かな記憶と、周囲の同情に耐えかねた彼は、ついに町を出る決意をします。
物語の最後、彼が日誌に書き残した言葉。「おねがいだからうらの庭のアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください」。このあまりにも有名なラストシーンは、失われた知性への哀悼であり、同時に自分という存在が生きていた証を求める、魂の叫びそのものです。