Apple Watchのハイブランド連携といえば、2015年の初代発売以来続く「Apple Watch Hermès」が世界的成功を収めています。エルメス専用の文字盤や上質なヴォー・スウィフト革を用いたレザーストラップは、テックガジェットを高級ファッションへ昇華させました。ではなぜ、世界最大のラグジュアリーコングロマリットであるLVMHの旗艦ブランド、ルイ・ヴィトンは同様の協業を選ばなかったのでしょうか。
両メゾンの戦略の違いを比較すると、ブランドビジネスにおける決定的な哲学の差異が浮き彫りになります。
Apple Watch Hermèsは、Appleのハードウェアとエコシステム(watchOS)の上に、エルメスの職人技によるストラップと専用デザインを融合させる「共存型」の戦略です。一方でルイ・ヴィトンは、自社のラグジュアリーな世界観を他社のテクノロジーの器に預けることを良しとせず、ケースの鍛造からOSのインターフェース設計に至るまで完全な自社コントロール下に置く「自立型」の道を選択しました。デジタルデバイスの領域であっても他社の下請け的なアクセサリー供給者にはならないという、トップメゾンとしての強烈な矜持がそこにあります。