大谷選手が過ごした花巻東高校の野球部専用寮「起雲寮」での日々は、野球に没頭するための極めてシンプルな環境でした。携帯電話の所持が厳しく制限され、テレビを見る時間も限られた空間の中で、大谷選手が他の部員と大きく異なっていたのは「自己対話の時間の長さ」でした。
当時の同級生やチームメイトが各種特番の証言で語る大谷選手の素顔は、決して近寄りがたい孤高の天才ではありません。宿舎では同期の部員と他愛ない冗談を言い合い、いたずらを仕掛けるなど、年相応の少年らしい明るさと人懐っこさを持っていました。同級生たちは「翔平は練習中、誰よりも野球を楽しそうにやっていた。嫌々やらされている感覚が一切なかった」と口を揃えます。
夜の自由時間、多くの部員が休息や雑談に充てる中、大谷選手はベッドの上で野球に関する専門書や著名アスリートの自伝を熱心に読み込み、トレーニングの理論をノートにまとめていました。現在、当時の花巻東の同級生たちは、大学野球や社会人野球を経て指導者になった者、一般企業で社会を支えるビジネスパーソンなど多方面に進んでいますが、同窓会や個人的な交流を通じて今も大谷選手との信頼関係は続いています。「高校時代にあいつがどれだけの覚悟で練習していたかを知っているから、今の活躍も全く驚きではない」という仲間の言葉は、大谷選手が高校時代に積み上げた日々の尊さを物語っています。