作中の伏線だけでなく、原作者である冨樫義博先生のキャラクター造形理論からも、ゴンの母親が登場しない理由を読み解くことができます。
冨樫先生は過去のインタビューや対談において、「母親という存在は、物語において子供の冒険を制限し、引き止めるブレーキになりやすい」という趣旨の創作論を語ったことがあります。少年漫画の主人公が命懸けの旅路に出る際、健全な母親が存在してしまうと「なぜ危険な旅を止めないのか」という倫理的な葛藤が常に付きまとうためです。
『HUNTER×HUNTER』に登場するメインキャラクターを見渡しても、キルアの母・キキョウは歪んだ支配欲を持ち、レオリオやクラピカの母親は既に他界しています。ゴンにとっての母親役をあえて「育ての親であるミトさん」に限定し、実母を物語の前面に出さない設計にしたのは、ゴンを純粋な野生児として解き放つための意図的な演出であったと推察されます。