明るい星を語る上で、現在世界の天文学者と天文ファンが最も熱い視線を注いでいるのが、オリオン座の1等星ベテルギウスです。この星は半径が太陽の約700倍から1,000倍にも膨れ上がった「赤色超巨星」であり、星の一生の最終段階を迎えています。
ベテルギウスはもともと明るさが周期的に変わる脈動変光星ですが、2019年末から2020年初頭にかけて「大減光(Great Dimming)」と呼ばれる前代未聞の現象を引き起こしました。通常の0.5等前後から一気に1.7等近くまで急激に暗くなり、オリオン座のバランスが肉眼で崩れて見えるほどの異変を見せたのです。当時は「いよいよ超新星爆発の前兆か」と世界中で大ニュースになりました。
その後のハッブル宇宙望遠鏡や地上大型望遠鏡の多波長観測による最新解析で、大減光の真因は星の内部崩壊ではなく、星の表面から大量のガスが噴出し、それが宇宙空間で冷えて巨大なダスト(塵)の雲となって地球からの視線を遮ったことだと特定されました。その後ベテルギウスは光度を取り戻し、一時期は平時を上回る0.0等近くまで増光するなど、ダイナミックな脈動を続けています。
2026年現在の国際的な天文学界のコンセンサスでは、ベテルギウスが超新星爆発を起こす時期は「明日かもしれないし、10万年後かもしれない」という段階です。星のコアで炭素や酸素の核融合が進んでいることは確実ですが、爆発の正確な秒読み段階を外側から検知することは現代の技術でも不可能です。今夜私たちが見上げているベテルギウスの赤い光は、約550年前に放たれたもの。今この瞬間に明るさを測るという行為そのものが、宇宙の壮大な寿命のドラマに立ち会う現場体験なのです。