「温かい目」に代表されるように、初期から中期にかけてのドラえもんは、現代のクリーンな優等生イメージとは大きく異なり、切れ味鋭い毒舌とシュールな狂気を随所で炸裂させていました。
代表的な迷シーンとして真っ先に挙げられるのが、同じくてんとう虫コミックス第2巻「タタミのたんぼ」で登場した「きみはじつにばかだな」という直球すぎる罵倒です。のび太が正論を言ったつもりになっている場面で、一切の悪気なく満面の笑みで言い放つドラえもんの姿は、温かい目と並ぶ屈指の名コマとして親しまれています。
他にも、「フグ鍋でも食おう」(第7巻「ねこの手もかりたい」)と突然のび太を道連れに心中を図ろうとしたり、のび太の弱気な態度に激怒して「うそつけ跳べ!」(第9巻「ウワサ鳥」)と窓から突き落とそうとしたりするなど、過激なエピソードには事欠きません。単なる便利なお世話係ではなく、人間以上に感情的で、時に冷酷な顔を覗かせるこうした初期ドラえもんのブラックユーモアこそが、作品を単なる児童向けの教育漫画にとどまらせない不朽の魅力となっています。