放送当時、SNS(旧Twitter・X)やドラマ考察サイトで毎週のようにトレンドを席巻したのが、脚本家・古沢良太氏による歴史通説の大胆な解体と再構築でした。
瀬名(築山殿)事件の真実――「慈愛の国」構想という挑戦
日本史上、織田信長から武田との内通を疑われ、家康の手によって処刑されたとされる正室・瀬名(築山殿)と嫡男・松平信康(細田佳央太)。従来の歴史劇では、瀬名は「プライドが高くヒステリックな悪女」として描かれることが通例でした。しかし本作では、有村架純さん演じる瀬名が「戦で大切な人を奪い合うのをやめ、各国の富を分かち合う連合体(慈愛の国)を作ろう」と諸国に呼びかける平和主義者として描かれました。
この計画が露見した際、徳川家と信康を守るために自ら命を絶つ選択をした瀬名の最期は、視聴者の間で「大河史上最も美しく悲しい築山事件」として語り継がれています。この悲劇を背負ったことが、家康が「戦なき泰平の世を作る」という不退転の決意を固める原動力となりました。
ムロツヨシが演じた「笑顔のサイコパス」秀吉の恐怖
豊臣秀吉像の刷新も大きな反響を呼びました。底抜けに明るい農民出身のサクセスストーリーではなく、ムロツヨシさん特有のコミカルな挙動の裏に、底知れない支配欲と承認欲求、そして他者の命を何とも思わない冷淡さを潜ませたキャラクター造形は圧巻でした。特に、妹の旭姫や老母の大政所を政略の道具として平然と差し出す非情さや、晩年の朝鮮出兵に狂奔する姿は、視聴者に強烈なトラウマとリアリズムを植え付けました。