従来の「薄利多売による値引き合戦」を構造的に終わらせた最大の黒幕が、2020年代初頭から本格化し、2026年の今日において白物家電全般へ定着した「メーカー指定価格制度」です。
この制度の先陣を切ったのがパナソニックでした。従来の家電流通は、メーカーが店舗に製品を「買い取り」させ、在庫リスクを負った量販店が自由に価格を決めて競い合う仕組みでした。これに対し、パナソニックの指定価格制度では、メーカーが自ら在庫リスクを負って売れ残りを返品受託する代わりに、販売店に対してメーカーが指定した販売価格を厳格に遵守させます。独占禁止法上問題となる従来の「再販売価格の拘束」を回避するため、委託販売に近い新たな流通スキームを構築したのです。
この指定価格制度が適用された最上位モデルのドラム式洗濯乾燥機、高級冷蔵庫、有機ELテレビ、ナノケアシリーズの高級ドライヤーなどは、店頭表示価格からの値引きが1円たりとも許されません。ケーズデンキの現場スタッフに「あんしんパスポートで安くしてほしい」「他店対抗で引いてほしい」と詰め寄っても、システム上で価格変更にロックがかけられており、店員個人の裁量や店長決済をもってしても値引き処理を通すことができない設計になっています。
現在では日立や三菱電機、ソニーなど他メーカーも主力ハイエンド製品において同様の価格維持モデルを追随させており、「高級家電ほど店頭で値引き交渉が通用しない」というパラドックスが現場の常識として定着しています。